\(\displaystyle s \equiv \frac{1}{r}\) としたときの軌道を決める式は
$$\left(\frac{ds}{d\phi}\right)^2 = \frac{1}{B^2} – \left(s – \frac{GM}{\ell^2}\right)^2 \tag{1}$$
ここで
$$\frac{1}{B} \equiv \sqrt{\frac{2\epsilon}{\ell^2} + \left(\frac{GM}{\ell^2}\right)^2} \tag{2}$$
であった。(小文字 \(b\) は後で使う短半径とバッティングするので,大文字 \(B\) を使います。)
\(\phi = 0\) で \(s\) したがって \(r\) が極値をもつという初期条件を課すと解は以下のようになるのであった。
$$s = \frac{1}{r} =\frac{GM}{\ell^2}+ \frac{\cos\phi}{B} \tag{3}$$
\(\epsilon < 0\) の場合:楕円軌道
楕円軌道であることがひと目でわかるように以下のような変数を定義してやる。
$$ \frac{GM}{\ell^2} = \frac{1}{a(1-e^2)}, \quad \frac{1}{B} = \sqrt{ \frac{2\epsilon}{\ell^2} + \left(\frac{GM}{\ell^2}\right)^2} = \frac{e}{a(1-e^2)}$$ すると,
$$\frac{1}{r} = \frac{1 + e\cos\phi}{a(1-e^2)}, \quad \therefore \ r = \frac{a(1-e^2)}{1 + e\cos\phi} \tag{4}$$ となり,この軌道は,長半径 \(a\),離心率 \(e\) の楕円であることが一目瞭然となる。
\(a\),\(e\) を保存量(運動の定数)を使って書き直してやると,束縛軌道の場合に \( \epsilon = -|\epsilon|\) となることを使うと
$$a = \frac{GM}{2|\epsilon|}, \quad e = \sqrt{1 – \frac{2 |\epsilon| \ell^2}{(GM)^2}}$$
デカルト座標での楕円の方程式の標準形
$$\ r = \frac{a(1-e^2)}{1 + e\cos\phi}$$が確かに楕円であることを確認するために,以下のようなデカルト座標に変換すると,
$$ x = a e + r \cos\phi, \quad y = r \sin\phi$$
\begin{eqnarray}
\frac{x^2}{a^2} + \frac{y^2}{a^2 (1-e^2)} &=&
\left(\frac{e + \cos\phi}{1 + e\cos\phi} \right)^2
+ \frac{(1-e^2) (1-\cos^2\phi)}{(1 + e\cos\phi)^2}\\
&=& 1\\
\therefore\ \ \frac{x^2}{a^2} + \frac{y^2}{b^2} &=& 1, \quad b \equiv a \sqrt{1-e^2}
\end{eqnarray}
となり,確かに原点を中心とした長半径 \(a\),短半径 \(b\) の楕円であることがわかってほっとします。この楕円の方程式は三角関数を使って以下のように媒介変数表示できましたよね。
$$x = a \cos\theta, \quad y = b \sin\theta$$
\(\epsilon > 0\) の場合:双曲線軌道
\(\epsilon > 0\) の場合は楕円軌道の解 \((4)\) をそのまま使い回して
$$a = – \frac{GM}{2\epsilon} \equiv – \alpha, \ \ \alpha > 0,
\quad e = \sqrt{1 + \frac{2 \epsilon \ell^2} {(GM)^2}} > 1$$
とすれば
$$r = \frac{\alpha (e^2 – 1)}{1 + e\cos\phi}$$
デカルト座標での双曲線の方程式の標準形
これが確かに双曲線であることを確認するために,以下のようなデカルト座標に変換すると,
$$ x = -\alpha e + r \cos\phi, \quad y = r \sin\phi$$
\begin{eqnarray}
\frac{x^2}{\alpha^2} – \frac{y^2}{\alpha^2 (e^2-1)} =\frac{x^2}{\alpha^2} – \frac{y^2}{\beta^2}
&=& 1, \quad \beta \equiv \alpha \sqrt{e^2 – 1}
\end{eqnarray}
となって,確かに双曲線であることがわかります。この式が双曲線関数を使って以下のように媒介変数表示できることも,あぁ双曲線だなぁと感じさせます。
$$x = \alpha \cosh t, \quad y = \beta \sinh t$$
\(\epsilon = 0\) の場合:放物線軌道
\(\epsilon = 0\) の場合は最初の式 \((2)\) から
$$\frac{1}{B} \equiv \sqrt{\frac{2\epsilon}{\ell^2} + \left(\frac{GM}{\ell^2}\right)^2} \Rightarrow \frac{GM}{\ell^2}$$
となるので,式 \((3)\) は
$$s = \frac{1}{r} =\frac{GM}{\ell^2}+ \frac{\cos\phi}{B} \Rightarrow \frac{1 + \cos\phi}{B}$$
つまり$$ r = \frac{B}{1 + \cos\phi}$$
デカルト座標での放物線の方程式の標準形
これが確かに放物線であることを確認するために,以下のようなデカルト座標に変換すると,
\begin{eqnarray}
x &=& r \cos\phi – \frac{B}{2} \\
&=& – \frac{B}{2} \frac{1 – \cos\phi}{1 + \cos\phi}\\
y &=& r\sin\phi \\
&=& B \frac{\sin\phi}{1 + \cos\phi}
\end{eqnarray}
\begin{eqnarray}
y^2 &=& B^2 \frac{1 – \cos^2\phi}{(1 + \cos\phi)^2}\\
&=& B^2 \frac{1 – \cos\phi}{1 + \cos\phi}\\
&=& -2 B x\\
\therefore\ \ x &=& -\frac{1}{2B} y^2
\end{eqnarray}
となって,確かに放物線であることがわかります。
この式は $\displaystyle y = \frac{1}{2B} x^2$を原点のまわりに \(90\)度,反時計回りに回転させて横倒しにした放物線の方程式になっています。あぁ,すっきりした。