簡単のために,この物体を棒とし,棒は観測者 \(A\) に対する観測者 \(B\) の運動の方向 \(\boldsymbol{e}\) と平行であるとする。(\(\boldsymbol{e}\) に垂直な成分については,長さが変化しないことも容易に示すことができる。)
観測者 \(A\) が測定する棒の長さ
観測者 \(A\) が測定する棒の長さとは,\(A\) の4元速度 \(\boldsymbol{u}\) に直交する3次元超曲面(これは観測者 \(A\) にとって同時刻3次元空間に相当する)上にある棒の先端と後端の座標差である。この長さを \(L\) とすると,この棒を表す4元ベクトルは
$$ \boldsymbol{l} = L\, \boldsymbol{e}$$
である。観測者 \(A\) が測定する長さは,\(\boldsymbol{e}\) にそった「成分」として定義できるので
$$ \boldsymbol{l}\cdot\boldsymbol{e} = L\, \boldsymbol{e}\cdot \boldsymbol{e} = L$$
と,確かに \(L\) になっている。
棒と一緒に運動している観測者 \(B\) が測定すると…
一方,この同じ棒の長さを,棒と一緒に運動している観測者 \(B\) が測定する長さを \(L_0\) とすると,\(L_0\)は観測者 \(B\) にとっての同時刻3次元空間内にある \(\bar{\boldsymbol{e}}\) にそった「成分」であるから,
$$ L_0 = \boldsymbol{l}\cdot\bar{\boldsymbol{e}} = L\, \boldsymbol{e}\cdot\bar{\boldsymbol{e}}$$
となる。4元速度の合成則のところで出てきた \(\boldsymbol{e}\) の変換式を使うと(\( \bar{\boldsymbol{e}} \cdot\bar{\boldsymbol{e}} = 1\), \(\bar{\boldsymbol{u}} \cdot\bar{\boldsymbol{e}} = 0\) であるから)
\begin{eqnarray}
L_0 &=& L \frac{1}{\sqrt{1-V^2}} \left(\bar{\boldsymbol{e}} – V \bar{\boldsymbol{u}}\right)\cdot \bar{\boldsymbol{e}} \\ \ \\
&=& \frac{L}{\sqrt{1-V^2}}
\end{eqnarray}
したがって,$$ L = L_0 \sqrt{1-V^2} < L_0$$ となり,観測者 \(A\) が測定する棒の長さ \(L\) は,棒に対して静止している観測者 \(B\) が測定する長さ \(L_0\) よりも収縮して観測される。