Return to 円軌道上を運動する時計の進み方

参考:世の中の教科書で説明されている GPS 衛星の時計の進み

世にあまたある教科書で説明されている GPS 衛星の時計の進み。例えば,以下の教科書:

では,どのように説明されているか。

上記の教科書では,円軌道を描いて運動する GPS 衛星の時計の遅れについて,だいたい以下のように説明されている。

まず,シュバルツシルト時空のメトリックと固有時間間隔 \(d\tau\) の定義は,

\begin{eqnarray} ds^2 &=& g_{\mu\nu} dx^{\mu} dx^{\nu} \\ &=& – c^2 d\tau^2 \\ &=& -\left(1 – \frac{r_g}{r}  \right) c^2 dt^2 + \frac{1}{1 – \frac{r_g}{r} } dr^2 + r^2 (d\theta^2 + \sin^2\theta d\phi^2)\end{eqnarray}

ここで$$r_g = \frac{2GM}{c^2 r}$$

赤道面(\( \theta = \frac{\pi}{2} \) 従って \(d\theta = 0 \) )上の円軌道(\(r = \mbox{const.}\) 従って \(dr = 0\) )については

\begin{eqnarray} d\tau &=& \sqrt{\left( 1 – \frac{r_g}{r} \right) dt^2 – \frac{1}{c^2} r^2 d\phi^2} \\
&=& dt \sqrt{1 – \frac{2GM}{c^2 r} – \frac{1}{c^2} r^2 \left(\frac{d\phi}{dt}\right)^2} \\
&=& dt \sqrt{1 – \frac{2GM}{c^2 r} – \frac{v^2}{c^2}} \end{eqnarray}

ここで $$\displaystyle v \equiv r \frac{d\phi}{dt}$$

は,円運動している場合のニュートン力学的な速さである。

ニュートン力学における円運動では,遠心力と万有引力のつり合いから

$$ m \frac{v^2}{r} = \frac{GMm}{r^2}, \quad\therefore \ \ v^2 = \frac{GM}{r}$$

\begin{eqnarray}
\therefore\ \ d\tau &=& dt \sqrt{1 – \frac{2GM}{c^2 r} – \frac{v^2}{c^2}} \\
&=& dt \sqrt{1 – \frac{2GM}{c^2 r} – \frac{GM}{c^2 r}} \\
&=& dt \sqrt{1 – \frac{3GM}{c^2 r} } \\
&=& dt \sqrt{1 – \frac{3}{2} \frac{r_g}{r}} \end{eqnarray}

ここで,「シュバルツシルト座標時間 \(t\) が \(dt\) だけ経過する間に,観測者の時計は \(d\tau\) 進む」と仮定すると,

$$\frac{d\tau}{d\tau_1} = \frac{dt \sqrt{1 – \frac{3}{2} \frac{r_g}{r}}}{dt \sqrt{1 – \frac{r_g}{r_1}}} = \frac{\sqrt{1 – \frac{3}{2} \frac{r_g}{r}}}{ \sqrt{1 – \frac{r_g}{r_1}}}$$

これは,我々が一般相対論的手法で導いた解と一致する。

こちらの方が簡単に導出できたように見えるが,しかし,この方法は \(dr = 0\) の円軌道の場合しか使えないし,ニュートン力学の結果を使っている点で何らかの近似が紛れ込んでいる。

その点,我々の方法は円軌道以外の一般的軌道の場合にも使えるし,円軌道の場合には一般相対論的な厳密解として導いたという点でも意義があると考える。