Return to 重力場中の測地線方程式

参考:4元波数ベクトルの共変成分に対する測地線方程式の導出方法

4元波数ベクトルの下付添字成分である「共変成分 \(k_{\mu} \equiv g_{\mu\nu} k^{\nu}\) に対する測地線方程式

$$\frac{d k_{\mu}}{dv} = \frac{1}{2} g_{\alpha\beta, \mu} k^{\alpha} k^{\beta}$$

の導出方法のおさらい。

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本サイトでは共変微分の定義や,計量テンソルの偏微分を使ったクリストッフェル記号の具体的な表記などを使わずに(このへんが私の密かなこだわりだったりするのだが),光の世界線 \(x(v)\) の接ベクトル \(\boldsymbol{k} = k^{\mu} \boldsymbol{e}_{\mu}\) の下付成分(歴史的に「共変ベクトルの成分あるいは単に共変成分」などと呼ばれてきた) \(k_{\mu} \equiv g_{\mu\nu} k^{\nu}\) に対する測地線方程式

$$\frac{d k_{\mu}}{d\tau} = \frac{1}{2} g_{\alpha\beta, \mu} k^{\alpha} k^{\beta}$$

を導き,この式を解いて重力場中の粒子の運動を求めている。測地線方程式をこの形にしておくと,保存量を求めるときに大変便利であることは度々強調しているのだが,世の中にあまたある教科書をみても,この形の測地線方程式を積極的に活用する書きぶりがあまり見られないようだ。もし見落としているテキストがありましたら,お手数でもお知らせください。

ここでは,この形の測地線方程式の導出方法について,(私の密かなこだわりはすてて)うちの学科のカリキュラムの関係上封印していた変分原理(最小作用の原理)による導出方法や,偏微分の定義およびクリストッフェル記号の具体的な表記を利用した導出方法についておさらいしておく。

変分原理による導出

光の場合はヌル \(ds^2 \equiv – d\tau^2 = 0\) であるため,固有時間 \(\tau\) をアフィンパラメータとして使うことはできない。そこで,アフィンパラメータを \(v\) とし,以下のようなラグランジアンを使う場合が多い。(例えば Schneider, Ehlers, and Falco, “Gravitational Lenses” など)

$${\cal{L}}\left(x^{\alpha}, \frac{d x^{\alpha}}{dv} \right) \equiv \frac{1}{2} g_{\alpha\beta}\frac{dx^{\alpha}}{dv} \frac{dx^{\beta}}{dv} $$

変分原理 \(\displaystyle \delta \int {\cal{L}} dv = 0\) より導かれるラグランジュ方程式は

\begin{eqnarray}
\frac{d}{dv}\left( \frac{\partial {\cal{L}}}{\partial\left( \frac{dx^{\mu}}{dv}\right)} \right) – \frac{\partial {\cal{L}}}{\partial x^{\mu}}
&=& \frac{d}{dv}\left( g_{\mu\nu} \frac{dx^{\nu}}{dv}\right) – \frac{1}{2} g_{\alpha\beta, \mu}\frac{dx^{\alpha}}{dv} \frac{dx^{\beta}}{dv} \\
&=& 0 \\ \ \\
\therefore\ \ \frac{d}{dv}\left( g_{\mu\nu} \frac{dx^{\nu}}{dv}\right) &=& \frac{1}{2} g_{\alpha\beta, \mu}\frac{dx^{\alpha}}{dv} \frac{dx^{\beta}}{dv}
\end{eqnarray}

\(\displaystyle k^{\mu} \equiv \frac{dx^{\mu}}{dv}, \ k_{\mu} \equiv g_{\mu\nu} k^{\nu}\) とすれば

$$\frac{d k_{\mu}}{d\tau} = \frac{1}{2} g_{\alpha\beta, \mu} k^{\alpha} k^{\beta}$$

が得られる。

以上のことからわかるように,この「共変成分」に対する測地線方程式は,解析力学におけるラグランジュ方程式に相当し,計量テンソル \(g_{\alpha\beta} \) ,したがってラグランジアン \({\cal{L}}\) が特定の座標 \(x^{\mu} \) 依存性をもたない場合は, \(x^{\mu} \) は循環座標と呼ばれ,この循環座標に共役な一般化運動量である \(k_{\mu} \) が保存するということを表している。

共変成分の共変微分からの導出

光の経路は,以下のように \(v\) をアフィンパラメータとした測地線方程式で表されるのであった。

$$ \frac{d\boldsymbol{k}}{dv} = \frac{d}{dv}
\left( k^{\mu}\,\boldsymbol{e}_{\mu}\right)
= \frac{d}{dv}
\left( \frac{dx^{\mu}}{dv}\,\boldsymbol{e}_{\mu}\right) = \boldsymbol{0}$$

反変成分 \(k^{\mu}\) に対する測地線方程式として書くと

\begin{eqnarray}
\frac{dk^{\mu}}{dv} + \varGamma^{\mu}_{\ \ \alpha\beta} k^{\alpha}k^{\beta} &=&
\frac{\partial k^{\mu}}{\partial x^{\nu}} \frac{dx^{\nu}}{dv} + \varGamma^{\mu}_{\ \ \ \nu\beta} k^{\beta}k^{\nu} \\
&=& \left\{k^{\mu}_{\ \ ,\nu} + \varGamma^{\mu}_{\ \ \ \nu\beta} k^{\beta} \right\} k^{\nu} \\
&=&0
\end{eqnarray}

これは共変微分を使って書くと

$$ k^{\mu}_{\ \ ;\nu} k^{\nu} = 0$$

共変微分と添字の上げ下げは可換だから

\begin{eqnarray}
g_{\mu\lambda} k^{\lambda}_{\ \ ;\nu} k^{\nu} &=&
k_{\mu ;\nu} k^{\nu} \\
&=& \left\{k_{\mu, \nu} -\varGamma^{\alpha}_{\ \ \ \mu\nu} k_{\alpha} \right\} k^{\nu} \\
&=& \frac{d k_{\mu}}{dv} – \frac{1}{2} g^{\alpha\beta} \left( g_{\beta\mu,\nu} + g_{\beta\nu, \mu} – g_{\mu\nu, \beta} \right) k_{\alpha} k^{\nu} \\
&=& \frac{d k_{\mu}}{dv} – \frac{1}{2} \left( g_{\beta\mu,\nu} + g_{\beta\nu, \mu} – g_{\mu\nu, \beta} \right) k^{\beta} k^{\nu} \\
&=& \frac{d k_{\mu}}{dv} – \frac{1}{2} g_{\alpha\beta, \mu} k^{\alpha} k^{\beta}  \\
&=& 0\\ \ \\
\therefore\ \ \frac{d k_{\mu}}{dv} &=& \frac{1}{2} g_{\alpha\beta, \mu} k^{\alpha} k^{\beta}
\end{eqnarray}