測温抵抗体で温度を測定する準備をする

温度を測定するセンサの一つに,測温抵抗体RTD)というものがあります.

学生実験では温度を測定する実験題目がありますが,そこでは普通の有機液体温度計や,普通のデジタル温度計を使っています.それらの代わりに測温抵抗体(とデータロガー)を使って遊んでみるのを目標にしますが,まずは準備編をお送りします.

測温抵抗体の概要

温度センサの測定原理はいろいろありますが,電気抵抗の温度依存性を利用したものが多く使われます.すなわち,物体の電気抵抗(根本的には物質の抵抗率)が温度によって変化するので,逆に抵抗がわかれば温度がわかるでしょ,という話です.

ということで原理的には温度-抵抗の関係がわかれば(かつそれが”単射”であれば)何を使ってもいいのですが,物質の安定性や感度の高さ,直線性などを考慮して,普通はサーミスタか測温抵抗体を使います.サーミスタは金属酸化物を混合してゴニョゴニョしたもので,安価なためデジタル温度計の普及品はたいていこれを用いています.

測温抵抗体は,Pt,Ni,Cuなどの金属そのものです.特にPtがよく使われ,日本産業規格においてもPtについて規定されています(JIS C 1604).サーミスタと比較した測温抵抗体の特徴は,以下のようになります.

  • 測定精度が高い.
  • 安定性が高い.
  • 高価である.
  • 応答性が低い.
  • 温度範囲が広い.

測定方法

測温抵抗体で温度を測定する際は,一定の電流を流して測温抵抗体両端での電圧を測定します.そのための回路には,2線式,3線式,4線式の3種類があります.線が増えるほど,リード線等の抵抗の影響を除くことができます.

  • 2線式では,リード線の抵抗の変化の影響を受けます(リード線の抵抗の影響そのものは,調整用の可変抵抗で取り除くことができる).リード線の長さを短く抑えたり,高抵抗の測温抵抗体を使った方がいいかもしれません.
  • 3線式では,リード線の抵抗の変化がキャンセルされます.ただしリード線の抵抗値に違いがあると,誤差を生じます.
  • 4線式は,抵抗測定のいわゆる4端子法と同じ回路になります.リード線の抵抗の影響を受けません.

抵抗値を直接測ってもいいのですが,多くの場合はデータロガーと一緒に使います.データロガーは,抵抗体に定電流を流して,両端の電圧を測定し,その電圧を温度に換算し,それを一定時間間隔で記録する,という動作を1台で行ってくれます.

測温抵抗体ユニットには特定のデータロガー専用の仕様(コネクタ形状など)のものも多くあります.そういう場合はそのデータロガーと合わせて使えばいいでしょう.一方で,汎用のデータロガーと合わせて使うような汎用性の高い測温抵抗体ユニットもあります.その場合は,接続部の形状や測温抵抗体の材質・抵抗値,リード線で接続するものであればその本数などを確認する必要があります.とは言うものの,Pt100で4線式に対応したものであれば普通は対応できると思います(4線の測温抵抗体を用いて3線式や2線式で測定することも可能です).

データロガー

今回使うデータロガーは,日置電機製のHIOKI 8420-50です.やや古い機種ではありますが,別の用途で使っていたものがお役御免になって遊んでいたのでここで再活躍の場を与えます(上から目線).

この機種は汎用のデータロガーであり,測温抵抗体をターミナルにネジ止めするようになっています.Pt100 もしくは JPt100(という古い規格)の測温抵抗体を使って,3線式または4線式で測定することができます.Pt100を使った場合は,-200℃~800℃の範囲で測定ができます.

入手

測温抵抗体をインターネット通信販売で購入してみました(そこらへんの道具屋では売っていないでしょう).様々な形状のものがありますが,今回購入したのはRS PROブランドのものです.

左側にあるのが測温抵抗体で,2 mm × 10 mm の薄膜状になっており,それが樹脂で保護されています.抵抗値は100Ω,リード線は4本出ています(両極から2本ずつ).クラスAのものとクラスBのものがありましたが,せっかくですので公差の小さいクラスAのものを選びました.1本で3500円程度だったでしょうか.今回は個体差を見るという目的(と,送料を無料にするという目的)で2本購入しました.

これで準備完了です.何を測りましょうか.