全国の技術職員はどうやってWordファイルからPDFファイルを生成するのか

先日、令和3年度 機器・分析技術研究会 in 山口宇部(リンク先はおそらく時限公開)が開催されました。国立大学法人等(ちゃんと書くと、文部科学省管轄の大学共同利用機関法人、国立大学法人、及び独立行政法人国立高等専門学校機構)において「機器・分析技術」を用いる業務に携わる技術系職員が情報交換を行う場、と考えていただくといいと思います。その研究会のオンライン発表(オフラインの研究会において口頭発表やポスター発表で行われるようなもの)の発表者が、予稿のPDFファイルをどうやって生成したのかを調べてみました。
調査方法ですか?35個のPDFファイルのプロパティを1つずつ見ていくだけの簡単なお仕事です。

◯多数派

まず主流派というか多数派を挙げていきます。(この節についてはハイパーリンクは省略します。)

最多だったのはMicrosoft WordのPDF出力機能で、35人中16人が使っています。今回は予稿をMicrosoft Wordで作成するように指定されていたこともありもっとも自然な方法だと思いますが、半分弱にとどまりました。バージョン別には、Microsoft365(サブスクリプション版)が5人、MacOSのパッケージ版が2人、Windowsのパッケージ版が9人です。

次に大きな勢力は、11人が使ったAcrobat PDFMakerです。これはAdobe Acrobatを導入するとついてくる、MS Officeへのアドインのようです。私の職場ではAdobe Acrobatは誰でも使えるものではありませんので、なかなかいい環境にある人々だということが推測できます。

続いてAcrobat Distillerが3人でした。これもAdobe Acrobatについてくるものですが、Acrobatのアプリケーションから出力を行ったということなのでしょうか。そして、Windows標準搭載の仮想プリンタであるMicrosoft: Print to PDFが2人でした。私が試してみたところ、(デフォルト設定では)MS WordのPDF出力機能よりフォントの線が細くなりました。

◯少数派

さて、ここからがこの記事の主題です。少数派(というか1人しか使っていなかったもの)を見ていきましょう。

PDFium

PDFiumというのは、ソフトウェアというよりは、ライブラリのようなものです(なので、具体的にどのソフトウェアでPDFファイルが作成されたかということは特定できません)。Google方面で開発されたオープンソースなライブラリで、chromeブラウザのレンダリングエンジンとしても使われているようです。NuGetパッケージなどもリリースされており、.Net系のアプリでも使いやすくなっています。

CubePDF

CubePDFというのは、株式会社キューブ・ソフトにより開発されている、オープンソースのソフトウェアです。CubePDFはPDF作成のための仮想プリンタですが、同じシリーズの他のソフトウェアではページ結合や画像抽出などもできるようになっています。こういうものを無償で頒布しているとどういうビジネスモデルなのかが気になってしまいますが、それについても公式サイトに記載がありました。バンドルウェアという手法を使っているということですので、インストールする際は慎重に行いましょう。(そういえば実験室PCにAdobe Acrobat Readerをインストールしてもらったら、怪しい不要なバンドルウェアもインストールされていたことがあったなぁ…)
CubePDF(シリーズ)は、iTextSharp(最新版はiText 7 for .Net)というライブラリでPDFをイジっているようです。NuGetパッケージもあります。

PDF XChange-standard

PDF-XChange standardというのは、株式会社ジャングルから発売されているソフトウェアです。英国のTracker Software社が開発したソフトウェアの日本国内版という位置づけなのだと思います。(為替レートにもよりますが、Track Software社のWebサイトから購入した方が割安に見えます。またローカライザーを覗いてみると日本語にも対応しているような気がします。)よくある仮想プリンタドライバなのですが、企業などで(対外的に)使われるような”きちんとした”PDFを出力するところに重点が置かれているようです。パッケージ版もありますが、法人向けのライセンスパックが中心なのでしょう。予稿ファイル作成者の所属する職場で導入されているのかもしれませんね。


少数派はいずれも私にとって初耳のソフトウェアということで、思いのほか面白い結果が得られました。もう少し興味が沸けばこれらのソフトウェアを掘り下げて調査することもあるかもしれませんが、この記事はいったんここで締めておきます。

蛇足

ちなみにPDFのバージョンは、1.7が31人、1.6が4人でした。生成方法との間に強い相関は見られませんでした。