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空気抵抗がある場合の斜方投射を調べる準備

鉛直下向きの一様重力場中で,ある初速度をもって物体を空中に投げ出す。これを業界用語で「斜方投射」(Wikipedia 英語版タイトルでは Projectile motion)という。

空気抵抗が無視できる場合には,斜方投射された物体は放物線を描いて運動し,初速度一定の条件で水平な地上面から投射角 $\theta$ で投射された物体の水平到達距離が最大となるのは,$\theta = 45$° であることが知られている。

では,空気抵抗がある場合はどうなるか?

空気抵抗がある場合,初速度一定の条件で投射された物体の水平到達距離が最大となる投射角 $\theta$ を調べるために,まずは準備。

問題(3択)

まずは予想をたててみよう。

空気抵抗がある場合の斜方投射の問題。初速度の大きさが一定の条件で,水平な地上面から投射された物体の水平到達距離が最大となる投射角 $\theta$ は…

  1. 45° より小さくなる。
  2. やっぱり 45° である。
  3. 45° より大きくなる。

 

空気抵抗がある場合の運動方程式

空気抵抗がある場合は,質点の速さがそれほど大きくない場合には,速度に比例するとしてよいだろうから,比例定数を $- m \beta$ とすると,運動方程式は以下のようになる。(マイナスがつくのは,抵抗というのは運動を妨げる向きに働くから。)

$$
m \frac{d^2\boldsymbol{r}}{dt^2} = – m\boldsymbol{g} – m \beta \frac{d\boldsymbol{r}}{dt}
$$

運動方程式の解

この運動方程式の解は

$$
\boldsymbol{r}(t) = \boldsymbol{r}_0 + \frac{1}{\beta} \boldsymbol{v}_0\,(1 – e^{-\beta t})
– \frac{1}{\beta^2} \boldsymbol{g}\,\left\{\beta t – \left(1 – e^{-\beta t}\right)\right\}
$$

となる。ここで,$\boldsymbol{r}_0 = \boldsymbol{r}(0), \  \boldsymbol{v}_0 = \boldsymbol{v}(0)$。以下で詳細を説明する。

解の導出の詳細

上の運動方程式の両辺を $m$ でわり,$\boldsymbol{v} = \frac{d\boldsymbol{r}}{dt}$ を使って書くと…

\begin{eqnarray}
\frac{d\boldsymbol{v}}{dt} + \beta \boldsymbol{v} &=& – \boldsymbol{g} \\
e^{-\beta t} \frac{d}{dt} \left(\boldsymbol{v}\, e^{\beta t}\right) &=& – \boldsymbol{g} \\
\frac{d}{dt} \left(\boldsymbol{v}\, e^{\beta t}\right) &=& – \boldsymbol{g}\,e^{\beta t}
\end{eqnarray}

となる。両辺を $t$ で積分すると,

\begin{eqnarray}
e^{\beta t} \,\boldsymbol{v} &=& -\frac{1}{\beta} \boldsymbol{g}\, e^{\beta t} + \boldsymbol{C}\\
\therefore\ \boldsymbol{v} &=& -\frac{1}{\beta} \boldsymbol{g} + \boldsymbol{C}\, e^{-\beta t}
\end{eqnarray}

積分定ベクトル $\boldsymbol{C}$ は初期条件を使って書ける。$t = 0$ で

\begin{eqnarray}
\boldsymbol{v}_0 &=& -\frac{1}{\beta} \boldsymbol{g} + \boldsymbol{C} \\
\therefore\ \boldsymbol{C} &=& \boldsymbol{v}_0 + \frac{1}{\beta} \boldsymbol{g}
\end{eqnarray}

この $\boldsymbol{C}$ を代入すると,

\begin{eqnarray}
\boldsymbol{v} = \frac{d\boldsymbol{r}}{dt} &=&
-\frac{1}{\beta} \boldsymbol{g} +
\left( \boldsymbol{v}_0 + \frac{1}{\beta} \boldsymbol{g} \right) e^{-\beta t} \\
&=& \boldsymbol{v}_0\, e^{-\beta t} – \frac{1}{\beta} \boldsymbol{g}\,
(1 – e^{-\beta t})
\end{eqnarray}

両辺をもう一度,$t$ で積分して…

\begin{eqnarray}
\boldsymbol{r}(t) &=& -\frac{1}{\beta} \boldsymbol{v}_0\, e^{-\beta t}
-\frac{1}{\beta}\boldsymbol{g}\,\left(t + \frac{1}{\beta} e^{-\beta t}\right) + \boldsymbol{C}’ \\
&=& -\frac{1}{\beta} \boldsymbol{v}_0\, e^{-\beta t}
-\frac{1}{\beta^2}\boldsymbol{g}\,\left(\beta t + \ e^{-\beta t}\right) + \boldsymbol{C}’
\end{eqnarray}

積分定ベクトル $\boldsymbol{C}’$ は初期条件を使って書ける。$t = 0$ で

\begin{eqnarray}
\boldsymbol{r}_0 &=& -\frac{1}{\beta} \boldsymbol{v}_0 -\frac{1}{\beta^2}\boldsymbol{g} + \boldsymbol{C}’ \\
\therefore\ \boldsymbol{C}’ &=& \boldsymbol{r}_0 + \frac{1}{\beta} \boldsymbol{v}_0 + \frac{1}{\beta^2}\boldsymbol{g}
\end{eqnarray}

この $\boldsymbol{C}’$ を代入すると最終的な解が得られる。

運動が平面内に限られる理由

斜方投射の問題は,しばしば運動が $xy$ 平面内に限られることを自明として説明されるが,運動が(変直方法に平行な)平面内に限られることは以下のように説明することができる。

上記の解から直ちにわかるが,空気抵抗があろうがなかろうが,位置ベクトルの変化分 $\boldsymbol{r}(t) – \boldsymbol{r}_0$ は2つの定ベクトル $\boldsymbol{v}_0$ と $\boldsymbol{g}$ の線形結合で書かれている。

つまり,位置ベクトル $\boldsymbol{r}(t)$ の時間変化はは2つのベクトル $\boldsymbol{v}_0$ と $\boldsymbol{g}$ で張られる平面内に限られることになり,斜方投射された物体の運動はこの平面内に限られることになる。

これが斜方投射された物体の運動が平面内に限られる理由である。

以下では簡単のために,その平面を $xy$ 平面とし,

$$\boldsymbol{r} = (x, y, 0), \quad \boldsymbol{r}_0 = (0, h, 0),
\quad \boldsymbol{v}_0 = (v_0 \cos\theta, v_0 \sin\theta, 0)$$

とする。

$x, y$ 成分で書いた解

あらためて解を書くと

\begin{eqnarray}
x &=& \frac{1-e^{-\beta t}}{\beta} v_0 \cos\theta  \\
y&=& h + \frac{1-e^{-\beta t}}{\beta} v_0 \sin\theta + \frac{1 -\beta t – e^{-\beta t}}{\beta^2} g\\
v_x &=& e^{-\beta t} v_0 \cos\theta  \\
v_y &=& e^{-\beta t} v_0 \sin\theta \  – \   \frac{1-e^{-\beta t}}{\beta} g
\end{eqnarray}

無次元化

この系に特徴的な時間 $\displaystyle \tau \equiv \frac{v_0}{g}$ および長さ $\displaystyle \ell \equiv v_0 \tau = \frac{v_0^2}{g}$ で解を無次元化しておく。空気抵抗の比例定数 $\beta$ は時間の逆数の次元をもつので,以下のように無次元化する。

\begin{eqnarray}
b &\equiv& \beta \, \tau \\
T &\equiv& \frac{t}{\tau} \\
H &\equiv& \frac{h}{\ell} \\
X &\equiv& \frac{x}{\ell} = \frac{1-e^{-b T}}{b}  \cos\theta \\
Y&\equiv& \frac{y}{\ell} = H+ \frac{1-e^{-b T}}{b}  \sin\theta  + \frac{1 -b T – e^{-b T}}{b^2}   \\
V_x &\equiv& \frac{dX}{dT} =e^{-b T} \cos\theta \\
V_y &\equiv& \frac{dY}{dT} = e^{-b T} \sin\theta \  – \   \frac{1-e^{-b T}}{b}
\end{eqnarray}

SymPy や Maxima を使って最大水平到達距離を求める

別ページにメモとしてまとめておいた。

 

SciPy で空気抵抗がある場合の斜方投射を調べる

空気抵抗がある場合の斜方投射の軌道を,Python の SciPy と NumPy を使って(かつ SymPy を使わずに)調べる。

詳細は以下のページ

  • 空気抵抗がある場合の斜方投射を調べる準備

Maxima で空気抵抗がある場合の斜方投射を調べる

空気抵抗がある場合の斜方投射の軌道を,Maxima を使って調べる。

詳細は以下のページ

  • 空気抵抗がある場合の斜方投射を調べる準備