概要
直流電位差計を用いて,乾電池の起電力や電流,抵抗などを測定します.零位法による測定の基礎を体験することや,基本的な電気測定の知識や技術を習得することなどが教育的な目標なのだと思います.
装置と方法
ここで使う直流電位差計は,島津理化のPD-83Aという機種になります.0 V から 1.6 V までの電位差を 10-4 V 単位で測定することができます.また,校正用の標準電池を内蔵しています.
電位差計で直接測定できるのは電位差(電圧)だけですが,既知抵抗と組み合わせることで,電圧降下法によって電流や抵抗を測定することができます.本題目ではダイヤル抵抗器を既知抵抗としてそれらの測定を行っています.アナログ(可動コイル型)電流計の内部抵抗を測定することで,「できるだけ小さい方がいい」とされる電流計の内部抵抗の大きさを実感できます.
コメント
この実験で使う物理はオームの法則程度のものですので,原理自体は気の利いた中学生でも理解できると思います.一方で,電流計の内部抵抗の話は高校の範囲かもしれませんし,電源(乾電池)の内部抵抗はここまでの教育で耳にしたことがないかもしれません.
電流を測定する測定器についてはだいたい内部抵抗が問題になります.アナログ電流計はもちろんですが,アナログ電圧計も本質的には電流計ですし(参考:電流計・電圧計 – 高校物理の部屋),デジタル機器で電流を測定する場合は,その電流を機器内部の抵抗に流して抵抗両端の電圧を測定するので,やはり機器内部の抵抗の影響を受けます.内部抵抗の大きさは,測定する電流の大きさ(に合わせた機器の設定)にも依存するのですが,それを比較するような課題はここでは行われていません.
蛇足になりますが,内蔵されている標準電池はウェストン電池(カドミウム標準電池)というものです.二昔前くらい(1990年)までは現役の電圧標準でしたが,今では博物館に収蔵されるものになっています(この記事を書き始めた2020年当時は山口県立山口博物館のWebサイトに収蔵品として紹介されていましたが,今は見当たりません.収蔵すらされないレベルのものになってしまったのでしょうか).
実験テキストでは1台ごとに校正値が与えられていますが,ここだけの話をするとその出所はもはや誰もわからないと思います.大昔から同じ校正値が使われていますが,現在の値との乖離も目立ち始めているようです.