ニュートンリング

概要

凸レンズと単色光によって観察できるニュートンリングを用いて、凸レンズの曲率半径を測定します。

装置と方法

まずニュートンリングについて簡単に説明しておきます。2枚のガラス板を重ねて、両者の間に薄い空気の層があるという状況を考えます。このとき、上から入射した光は、上のガラス板の下面と、下のガラス板の上面で反射します(もちろん、上のガラス板の上面など他の部分でも反射は生じますが、通常はニュートンリングには寄与しません)。この両者の反射光は干渉して、強め合ったり弱め合ったりします。強め合うか弱め合うかは、空気の層の厚さ(と光の波長)に依存します。具体的には、(一定の波長の入射光について)強め合うような厚さと弱め合うような厚さが周期的に存在します。したがって上からそれを見ると、強め合った部分と弱め合った部分が縞模様のように見えます。その縞模様を干渉縞と呼ぶことがあります。

ここで、(球面の)凸レンズと平面ガラス板を重ねた状況を考えます。凸レンズの凸面と平面ガラス板が(理想的には)1点で接しています。両者の間の空気層は接点からの距離に対応しており、接点から遠くなるほど広くなっていきます。このような状況では、同心円状の干渉縞が見られます。この場合の干渉縞を特にニュートンリングと呼びます。この縞は、空気層の厚さに対応する、ある意味で等高線のようなものです。

球面凸レンズであることを仮定した上でその曲率半径を知りたいのであれば、1つのリングの径だけを測れば原理的に十分なのですが、学生実験では10個程度のリングの径を測定するケースが多いようです。その理由としては、そもそも凸レンズが球面であることを確認するため、あるいは測定精度向上のため、と考えられます。ここでは5番目から14番目の暗環の直径を測定しています。内側の暗環を使っていないのは、(画像を見てもお分かりのように)内側の暗環は幅が広いため、測定の不確かさが大きくなるからです。


ここでは、島津理化のニュートンリング測定装置NR-50を使用しています(販売終了という噂を聞いたことがあります→NR-50Aが後継しているようです)。2枚のガラス板とそれを固定するための試料台、横からのランプの光をガラス板の上から照らすためのハーフミラー、それを覗き見るための顕微鏡、顕微鏡を精密に移動させるためのマイクロメータ、などから構成されています(ナトリウムランプは別売です)。試料台は回転することができるので、任意の方向について測定することができます。(ニュートンリングにピントを合わせるために)顕微鏡の高さを調整するときに、顕微鏡でハーフミラーを割る事故がときどき起こるので注意しましょう。

コメント

「ニュートンリング」は、この手の学生実験の光学系の題目としてはまずまずメジャーなものだと思います。原理が平易である(高校物理の範囲で十分に理解できる…反射波の位相反転条件を除けば)こと、光の干渉を体感できる数少ない題目であること、あたりがその理由なのでしょう。

また単色光以外の光源で同様の観察(定量的な測定は行いません)を行う科目もあります。観察した結果をきちんと説明しようとすると難易度は上がります。

一方で、「曲率半径を測定する」という目的は必ずしも光学には関係なかったりします。そのためこの測定を単に作業として行ってしまうと、光学の理解には結びつかないでしょう。

さらに曲率半径の参考値が(たとえば物性に関する値のようには)文献から得られないため(製品の仕様値を与えるケースもありますが)、「参考値がないと測定の精度について論じられない」症候群の学生が多数現れます。逆に考えると、その症候群から脱出する/脱出させるためのいい機会であるとも言えます。

装置についても一言述べると、顕微鏡の位置をマイクロメータで読み取るようになっています。マイクロメータは他の題目でも使うものではあるのですが、そこではデジタル式のマイクロメータに置き換えられているケースがあります。しかし本装置ではマイクロメータの交換が困難になっていますので、アナログ式マイクロメータの読み方を習熟する必要があります。

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