医用システム開発マイスター養成塾「機器分析技術」のレポート講評を忘れた頃に公開する

医用システム開発マイスター養成塾とは?

かつて弘前大学では、「医用システム開発マイスター養成塾」(長いので以下「養成塾」)という事業が行われていました。主に津軽地域の精密機器関連企業で勤務する技術者をターゲットに「医用システム開発マイスター」を養成するというもので、ひいては津軽地域を医用システム関連産業の拠点とすることを目指したものでした。文部科学省科学技術振興調整費「地域再生人材創出拠点の形成」(リンク先はあえてWARPアーカイブ)の助成期間が2008年度から2012年度だった[1]ので、事業もその辺りの時期に行われたのでしょう。
養成される側の受講生の目線では、半年間の「基礎コース」とそれに続く1.5年間の「アドバンストコース」を受講し、修了要件を満たすことで「医用システム開発マイスター」に認定されます。

養成塾と私

ここまで読むと私には縁がなさそうに見えますが、ひょんなところから接点が生まれます。養成塾のアドバンストコースに「機器分析技術」という科目がありました。これはいくつかの分析装置に関する講義(と簡単なデモンストレーション)を、オムニバス形式で行うというものですが、EPMA(電子線マイクロアナライザー)の回を、当時の機器管理責任者であった柴正敏教授とともに私が担当することになりました(EPMA回は90分×2コマを1日で行うものでした。前半を講義として柴教授が、後半のデモンストレーションを私が担当しました)。

レポートの概要と講評

「機器分析技術」の科目では、「医用システム開発と分析技術について」というテーマでレポートを提出する課題が与えられたようです(それ以上の詳細を私は把握していません)。オムニバス科目という性質上多くの講師が担当しているので、各講師が100点満点で評価したものを、(担当回数で)加重平均したものが最終的な得点としていました。また目安として「中央値80点」という基準が与えられていました。

レポートの内容としては、「分析装置についてのまとめ」と「医用システム開発における機器分析の利用可能性」の2つに分けられました。後者の方が与えられたテーマに近いように感じたので、ベースの得点は後者の方を高くしています(が、前者だけでも高得点を得られる仕様にしたつもりです)。

  • 純粋に「分析装置についてのまとめ」をしているものは70点をベースにする。独自の調査や考察があるものはそれに応じて加点、一方で用語等の理解があやふやなものは減点を施す。
  • 「医用システム開発における機器分析利用の可能性」を論じているものは、80点をベースに内容を考慮して加減。「分析装置についてのまとめ」もなされていれば、内容に応じて0点〜5点を加点。
  • 文章構成(見出しや段落の使い方など)の巧拙に応じて-5点〜+5点を調整。

以下は数年行ったうちのある1年についての感想ですが、「医用システム開発における機器分析の利用可能性」について言及していたレポートの方が文章構成についても高評価だったために、結果的に「医用システム開発における機器分析の利用可能性」について論じてあるものとそうでないもので得点分布が二極化してしまいました。
また別の年についての感想では、こんな記述が残っていました。「上記基準で採点したら、80点に達したのが1人しかいなかったので、最低点からのオフセットを1.5倍にする形で調整した。」

以下、余談

職場で使う業務PCを(Mac miniに)更新したのをきっかけに、旧業務PCに眠っていた古いデータを掘り起こしていると、「養成塾」の講師をしていた記録が見つかりました。このタイミングで「いまさら」講評を公開したのはそういうきっかけがあったからです。

通常業務で学生実験の指導補助を行っていますが、提出されたレポートにフィードバックを返すことはあっても、「採点」を行う機会はありません。「養成塾」においては1コマだけとはいえ大学教員と同等の講師という立場になり、「採点」までを行うことになりました。当時はそこまで意識していませんでしたが、いまこうして振り返ると貴重な機会だったなぁと実感しています。

参考文献

  1. 小野、牧野、稲村 弘前大学「医用システム開発マイスター」養成塾による地域連携,工学教育58-5(2010) 7-11
  2. 弘前大学広報誌 ひろだいVol.15(2010) 13-14