【JEOL Webセミナー】EPMA(WDS)の検出限界に基づく微量元素分析条件の検討

2019年3月15日に開催された表題のWebセミナーを受講しました.

EPMAのスペックシートには,重元素(Na~U)で0.001~0.01 %(質量比;以下同じ),軽元素で0.01~0.05 %という検出限界が示されているものの,それはある意味でチャンピオンデータのようなものであって,常用条件ではどの程度の「微量」な元素を検出できるかを検討したよ,という話でした.そのときの自分のメモを,試しに公開してみます.

本記事を公開するのは,開催から1年を経過した今,このようなメモがJEOLにとって不利益となるものではないと思い込んでのことです.ただし,JEOL側から公開してくれるなという依頼があった場合などは,公開を中止する場合があります.

JEOLのWebセミナー

JEOL(日本電子株式会社)では,同社製の分析装置に関連したWebセミナーを開講しており,幾許かの個人情報と引き替えに(無料で)受講することができます.時間も30分(まれに60分)とお手頃ですので,気軽に受けられます(※個人の感想です)

ということを,学外からの分析依頼者に教えて頂いたのが1年ほど前の話です.そしてさっそく受講してみたのがこの回のセミナーだったのでした.Webセミナーにはアーカイブ動画が公開されているものもありますが,この回は現在公開されていないようです.

受講メモ

それでは本題に入ります.本セミナーでは,点分析についての話と面分析についての話がありました.また表題にWDSとあるにもかかわらず,EDSの話も出てきました.まずは点分析についてまとめます.

以下,自分用のメモをほとんどそのまま転載していますので,”雑な”文章になっている点はご容赦願います.

  • 点分析を4つ(+1)に分類.全元素検出定性,単元素検出定性,定量,微量定量(とEDS).
  • 全元素検出定性は,100 nA,5 minぐらいを想定.これだと重元素で0.1 %ぐらいが限度.軽元素は3倍くらい多い(「多い」は「悪い」の意).
  • 単元素検出定性は,100 nA,1 minぐらいを想定.それでも全元素に比べると10倍ぐらいのSweep Timeをとれるので,検出限度は3倍ほど下がる.
  • 定量分析は,50 nA,1 minぐらい(20+10 secとか).これだと0.02~0.03 %程度が検出限度.
  • 微量定量は電流を10倍にする(時間でもいいけど).これで0.01 %に到達.さらに電流や時間を増やすことで0.001 %も不可能ではないのだけど,さすがにそれは常用条件ではないということか.
  • 軽元素はおおむねその2~3倍.ただし吸収の大きくなる組み合わせでは,さらに限度が大きくなることもある.
  • EDSでは全元素検出よりもさらに限度が3倍くらい大きい.また軽元素ではピークオーバーラップが影響する(たとえばBとCのピークを分離できない)ので,時間を伸ばしても精度の向上には限度がある.

後半は面分析の話でした.

  • 面分析は,通常はピーク強度のみを測定する.また,9点の平均で評価する.15 kV,50 nA,30 ms/pixel,256点×256点の測定で30分かけると,Niの検出限界で0.28 %という値が一つの目安になる.
  • あとは電流と時間で調整.ただしEDSでは電流を増やすと数え落としが増えて,それほど向上しない.
  • 微小領域の空間分解能は,LaB6よりもFE電子銃の方が5倍ぐらい?高い.
  • 組成比が1%ずつ違う3相を分離できた例が紹介されていた.15 kV,100 nA,50 min.

セミナー中で挙げられた軽元素の測定には,LDE2Hなどの分光結晶を使っていました.(本学の装置のように)Hのついていない分光結晶では検出限度がもう少し大きいのだと思います.