楕円の周長を一定にしたとき,面積が最大となるのは円であることの近似的証明

陰関数定理の練習問題として。

練習問題:長方形の周長を一定にしたとき,面積が最大となるのは正方形のときであること

縦横の長さがそれぞれ $a, b$ である長方形の周の長さ $L$ は

$$L = 2(a+b)$$

であり,面積 $S$ は

$$S = a b$$

周長 $L$ を一定に保ったまま $a, b$ を変化させると,面積 $S$ が最大となるのは $a = b = \frac{L}{4}$ の正方形のときであることを示す。

後々の応用を考えて,陰関数定理なんかを使って大掛かり的にやる。まず,$L = \mbox{const.} \equiv L_0$  であるので,$a, b$ はどちらも独立な変数というわけにはいかなくなり,$b$ は $a$ の関数 $b = b(a)$ となる。陰関数定理を使って,

\begin{eqnarray}
\frac{db}{da} &=& – \frac{\frac{\partial L}{\partial a}}{\frac{\partial L}{\partial b}} \\
&=& – \frac{2}{2} = -1
\end{eqnarray}

この条件のもとで,$S$ が極値(最大値)を持つのは,

\begin{eqnarray}
\frac{dS}{da} &=& \frac{\partial S}{\partial a} + \frac{\partial S}{\partial b} \frac{db}{da} \\
&=& b + a \cdot (-1) \\
&=& b – a = 0 \\
\therefore\ \ a &=& b = \frac{L}{4}
\end{eqnarray}

のとき,すなわち正方形のときである。このときが極大(最大)となることは

\begin{eqnarray}
\frac{d^2 S}{da^2} &=& \frac{\partial}{\partial a} \frac{dS}{da} + \frac{db}{da} \frac{\partial}{\partial b}\frac{dS}{da} \\
&=& -1 -1 < 0
\end{eqnarray}

と上に凸であることからわかる。

本題:楕円の周長を一定にしたとき,面積が最大となるのは?

上記の練習問題のように,楕円の場合もやっていけばよいが,楕円の周長は解析的に積分できないため,次善の策として,ラマヌジャンによる楕円周の近似式を使って,近似的に証明してみる。以下のページも参考に。

ラマヌジャンによる楕円の周長の近似式

長半径 $a$,短半径 $b$ の楕円の周長をあらわすラマヌジャンによる近似式は

\begin{eqnarray}
L &\equiv& \pi \left(3 (a+b) – \sqrt{(a+3b)(3a+b)} \right) \\
&=& \pi \left(3 (a+b) – \sqrt{3 a^2 + 10 ab + 3 b^2} \right)
\end{eqnarray}

であり,楕円の面積 $S$ は

$$S = \pi a b$$

楕円の周長 $L$ を一定に保ったまま $a, b$ を変化させると,面積 $S$ が最大となるのは $a = b$ の円のときであることを,ラマヌジャンによる周長の近似式を使って示す。

まず,$L = \mbox{const.} \equiv L_0$  であるので,$a, b$ はどちらも独立な変数というわけにはいかなくなり,$b$ は $a$ の関数 $b = b(a)$ となる。陰関数定理を使って,

\begin{eqnarray}
\frac{db}{da} &=& – \frac{\frac{\partial L}{\partial a}}{\frac{\partial L}{\partial b}} \\
&=& – \frac{3 – \frac{3 a + 5 b}{\sqrt{3 a^2 + 10 ab + 3 b^2} }}{3 – \frac{3 b + 5 a}{\sqrt{3 a^2 + 10 ab + 3 b^2} }}\\
&=& -\frac{3 \sqrt{3 a^2 + 10 ab + 3 b^2} – 3 a – 5 b}{3 \sqrt{3 a^2 + 10 ab + 3 b^2} – 3 b – 5 a}
\end{eqnarray}

この条件のもとで,$S$ が極値(最大値)を持つのは,

\begin{eqnarray}
\frac{dS}{da} &=& \frac{\partial S}{\partial a} + \frac{\partial S}{\partial b} \frac{db}{da} \\
&=& \pi b + \pi a \cdot\left(-\frac{3 \sqrt{3 a^2 + 10 ab + 3 b^2} – 3 a – 5 b}{3 \sqrt{3 a^2 + 10 ab + 3 b^2} – 3 b – 5 a} \right)\\
&=& 3 \pi (b – a) \frac{\sqrt{3 a^2 + 10 ab + 3 b^2} –  b –  a}{3 \sqrt{3 a^2 + 10 ab + 3 b^2} – 3 b – 5 a} \\
&=& 0 \\
\therefore\ \ a &=& b
\end{eqnarray}

のとき,すなわち円のときである。このときが極大(最大)であることは,$\displaystyle \frac{d^2 S}{da^2}$ を計算するのは面倒なので,$\displaystyle \frac{dS}{da}$ の符号が $(b-a)$ だけで決まることからわかる。(なぜかは各自考えてみて。)

面積 $S$ を $a$ の関数 $S(a)$ として,

  • $a < b$ のとき,$\displaystyle \frac{dS}{da} \propto (b-a) > 0$,
  • $a = b$ のとき,$\displaystyle \frac{dS}{da} \propto (b-a) = 0$,
  • $a > b$ のとき,$\displaystyle \frac{dS}{da} \propto (b-a) < 0$,

となり,$a=b$ のときが極大(最大)となる。

関孝和による楕円の周長の近似式

同様なことは,関孝和による楕円周長の近似式

\begin{eqnarray}L_{\rm Seki} &=& 2 \sqrt{4 (a-b)^2 + \pi^2 a b}\end{eqnarray}

を使っても近似的に証明できるかもしれない。