以前,力学の授業を担当していた時期があり,フーコーの振り子についてもネタにしてので,国立科学博物館や本学に設置されている振り子を見学したことがあった。
最近は,担当しているコンピュータ演習の授業で,単振り子の振れ角が小さくない($\sin\theta \simeq \theta$ という近似が成り立たない)場合に,単振り子の周期は振幅にどのように依存するかという問題を数値的に解いてもらったりしている。
そこで,単振り子の練習問題として使えるかもしれないので,昔撮った写真などをまとめておく。
国立科学博物館のフーコーの振り子
国立科学博物館の常設展示データベースでは,以下:
昔の話になるが,2008年11月13日撮影。(しょぼいデジカメで撮ったためか,腕が悪いのか,ピントがピンとあっていなかったり,手持ちなので動画がブレたりしていてたりするが,ご愛嬌。)
設置場所:以下の写真でわかるように,階段の吹き抜け部分に設置されている。
いかなる高精度の振り子といえど,時間が経つと振幅が小さくなっていって,やがては振れなくなってしまうだろう。国立科学博物館の振り子は,いったいどのくらいの時間,振れ続けるのだろうか… とじーっと1時間ほど見守っていると,驚愕の大スクープ!
どこからともなく,白い手袋をしたおじさんが現れて,振幅が小さくなっていた振り子を慎重に持ち抱え,大きく振り直すんです! 人力で振り子が動き続けるようにしていたんですね!
弘前大学のフーコーの振り子
上記のページによれば,弘前大学理工学部2号館(11階建)のロの字型の建物の吹き抜け部分に設置された振り子は,ワイヤーの長さ45m と日本一の長さである。
昔の話で恐縮であるが,2008年10月27日撮影:
2010年5月15日撮影:以下に見えるように,円形の台座が取り付けられた。この内部には自動励起装置があるらしい。
単振り子の振幅?
なお,上記ページには,振幅は 3.0m と書いているが,実際に現場で見ると,この値は怪しい。丸い台座の直径が目視でほぼ 3.0m であるからだ。
問題:単振り子の「振幅」は次のうちのどれ?
- (1) の角度,すなわち鉛直下向きをゼロとしたときの振れ角の最大値
- (2) の角度,すなわち (1) の角度の2倍
- (3) の長さ,すなわち振り子の支点からの水平方向の長さの最大値
- (4) の長さ,すなわち (3) の長さの2倍
フーコーの振り子で地球の自転を知る前に
フーコーの振り子は,それを設置している地球が慣性系ではなく,自転している回転系であることによる振動面のずれをみることで,地球が確かに自転しているのだ!と理解する装置ではあるのですが,その前にまず,
慣性系においては単振り子の振動面は一定であること
が大前提となる。この理解があって初めて,振動面が一定ではないならばそれは慣性系ではなく,回転系なのだという解釈が可能になる。
なぜ慣性系においては単振り子の振動面は一定であるのか?
単振り子の振動面が(慣性系においては)一定であることは,なんとなく皆さんわかっていると思うが,ではなぜなのか?
なぜこんなことを書くのかというと,(もう時効になっただろうから書くが)かつて,弘前大学のフーコーの振り子の展示パネルに以下のように書かれていたからだ:
驚くべきことに,振り子の振動面が一定であるのは「慣性の法則」に従っているからだという説明が(かつて)あった。これが誤りであることは,「慣性の法則」は物体に力が働かないときにのみ成り立つのであって,振り子には重力(とワイヤーからの張力)が働いているから,「慣性の法則」の対象外,ということからわかるでしょ。
今ではこの展示パネルは無くなって,現在ではWebページにあるように,「振り子は角運動量保存の法則に従って宇宙空間に対して一定の軌道を前後して振動する」と書かれています。角運動量が保存するのは中心力の場合だけであり,振り子の重りにかかる重力は,一般には中心力とはならないため(常に鉛直下向きの力ですよね),この説明も細かくいえば正しくないです。
より厳密には,以下のページに書いておきました,参考までに。