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宇宙論的赤方偏移のおさらい

世の中の教科書では,宇宙論的赤方偏移はどのように説明されているか。例えば,「ワインバーグの宇宙論(上)」(ワインバーク著,日本評論社)の 1.2 節を参考に,notation を若干変更し,重力赤方偏移の説明とパラレルになるように論調をあわせておさらいする。

FLRW 計量は

$$ds^2 = – dt^2 + a^2(t) \left( \frac{dr^2}{1 – k r^2} + r^2 \left(d\theta^2 + \sin^2\theta \,d\phi^2\right)\right)$$

光の進路はヌルであるから,シュバルツシルト時空において動径方向に放出された光について

$$ds^2 = – dt^2 + a^2(t) \frac{dr^2}{1 – k r^2} = 0$$
$$\therefore\ \ dt = \pm a(t) \frac{dr}{\sqrt{1 – k r^2}}$$

\(dt > 0\) で \(dr > 0\) とし,「変数分離」しておくと

$$\frac{dt}{a(t)} = \frac{dr}{\sqrt{1 – k r^2}}$$

\(r = r_1\) から \(t = t_1\) に放出された光が,\(r= r_2 (> r_1) \) へ \(t=t_2 (> t_1)\) に到着する,とすると,

$$\int_{t_1}^{t_2} \frac{dt}{a(t)} = \int_{r_1}^{r_2} \frac{dr}{\sqrt{1 – k r^2}}$$

\(r = r_1\) で \(n\) 個の波を放出する。最後の波が放出された時刻が \(t = t_1 + \Delta t_1\)。

\(r = r_2\) へ最後の波が到着する時刻を \(t = t_2 + \Delta t_2\) とすると,

\begin{eqnarray}
\int_{t_1+ \Delta t_1}^{t_2+ \Delta t_2} \frac{dt}{a(t)} &=& \int_{r_1}^{r_2} \frac{dr}{\sqrt{1 – k r^2}}\\
\therefore\ \ \int_{t_1}^{t_2} \frac{dt}{a(t)} &=& \int_{t_1+ \Delta t_1}^{t_2+ \Delta t_2} \frac{dt}{a(t)} \\
&=& \int_{t_1}^{t_2} \frac{dt}{a(t)} + \int_{t_2}^{t_2+ \Delta t_2} \frac{dt}{a(t)}  – \int_{t_1}^{t_1+ \Delta t_1} \frac{dt}{a(t)}\\
\therefore\ \ \int_{t_1}^{t_1+ \Delta t_1} \frac{dt}{a(t)} &=& \int_{t_2}^{t_2+ \Delta t_2} \frac{dt}{a(t)}
\end{eqnarray}

最後の式は \(\Delta t_1, \Delta t_2\) が十分小さいとすると以下のようになる。(定積分が面積になること,積分範囲が十分狭ければほぼ長方形の短冊の面積でよいことを表している。)

$$\frac{\Delta t_1}{a(t_1)} = \frac{\Delta t_2}{a(t_2)} \equiv \Delta T$$

したがって

$$\Delta t_1 = a(t_1) \Delta T, \quad \Delta t_2 = a(t_2) \Delta T$$

FLRW 計量では \(g_{00} = -1\) であるため,空間座標が一定の共動観測者の固有時間は

$$ds^2 = – d\tau^2 = – dt^2$$

より \(d\tau = dt\) である。

重力赤方偏移の場合と同様に)観測者が観測する光の振動数は,波の個数を固有時間 \(d\tau\) で割ったものである,とする。(ただし,ここでは \(g_{00} = -1\) であるため \({\color{red}{d\tau}} = \color{blue}{dt}\) なんですけどね。また,シュバルツシルト時空における重力赤方偏移のときは \(\Delta t_1 = \Delta t_2\) であったが,膨張宇宙では上記のように丹念に導くと \(\Delta t_1 \neq \Delta t_2\) であることに留意する。)

\(r = r_1\) の共動観測者が観測する光の振動数 \(\nu_1\) は

$$\nu_1 = \frac{n}{\Delta \tau_1} = \frac{n}{\Delta t_1} = \frac{n}{a(t_1) \Delta T}$$

この同じ光を \(r = r_2\) の共動観測者が観測すると,その振動数 \(\nu_2\) は

$$\nu_2 = \frac{n}{\Delta \tau_2} = \frac{n}{\Delta t_2} = \frac{n}{a(t_2) \Delta T}$$

$$\therefore\ \ \frac{\nu_2}{\nu_1} = \frac{a(t_1)}{a(t_2)}$$

膨張宇宙においては \(\dot{a} > 0\) であるから,\(a(t_1) < a(t_2)\)。従って,

$$\frac{\nu_2}{\nu_1} = \frac{a(t_1)}{a(t_2)} < 1$$

となる。一般に時刻 \(t\) に放出された光を現在時刻 \(t_0\) に観測すると,\(t_1 \rightarrow t, \ t_2 \rightarrow t_0\) と置き換えて

$$\frac{\nu_0}{\nu} = \frac{a(t)}{a(t_0)} < 1$$

この式を波長を用いて書き換える。その際,動径方向の座標変位 \(dr\) に対応する空間的長さ \(d\ell\) は

$$d\ell = \sqrt{g_{11}} dr$$

またヌルであるから

$$d\ell = \sqrt{g_{11}} dr = \sqrt{-g_{00}} dt = dt$$

を用いると,動径方向に進む光の速さ \(v\) は

$$v = \frac{d\ell}{d\tau} = \frac{dt}{d\tau} = \frac{dt}{dt} = 1 = c$$
(ここでは \(c = 1\) としていたことに注意。)

つまり,膨張宇宙においても共動観測者が観測する光の速さは \(v = c\) で一定となる。

これを使うと,波長 \(\lambda\) と振動数 \(\nu\) の関係は

$$\lambda \nu = c, \quad \therefore\ \ \lambda \propto \frac{1}{\nu}$$

したがって

$$\frac{\lambda_0}{\lambda} = \frac{\nu}{\nu_0} = \frac{a(t_0)}{a(t)}$$

赤方偏移 \(z\) を

$$z \equiv \frac{\lambda_0 – \lambda}{\lambda} = \frac{\lambda_0}{\lambda} – 1$$

のように定義すると,宇宙論的赤方偏移 \(z\) は

$$ 1 + z = \frac{a(t_0)}{a(t)}$$

となる。ちなみに,conformal time 共形時間 \(\eta\) を使った計量

$$ds^2 = a^2(\eta) \left\{- d\eta^2 +  \frac{dr^2}{1 – k r^2} + r^2 \left(d\theta^2 + \sin^2\theta \,d\phi^2\right)\right\}$$

から始めても,ヌル条件から

$$d\eta = \frac{dr}{1- kr^2} \quad\Rightarrow\ \ \ \Delta \eta_1 = \Delta \eta_2$$および,固有時間が \(d\tau = a(\eta) d\eta\) となることから,同様にして宇宙論的赤方偏移の式

$$1 + z = \frac{a(\eta_0)}{a(\eta)}$$

を求めることができる。

また,宇宙論的赤方偏移の説明においても,光の伝播はヌル測地線であることは必須かと思うが,上記の説明では「ヌル条件」のみを使用し,「測地線」であることはあからさまには使っていないように思われう。(測地線であることは光の伝播を理解するために必要であると思うのだが,どこで測地線条件を使っていることになるのか,ちょっと見抜けずにいます。)