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光のドップラー効果のおさらい

世の中の教科書では光のドップラー効果はどのように説明されているか。例えば,「相対性理論」(中野董夫著,岩波書店)の p. 87 あたり等を参考にして,ローレンツ変換にもとづいた光のドップラー効果の説明について,おさらいする。

簡単のために \(c=1\) とする。

光の伝播をあらわす4元波数ベクトル

観測者 \(A\) の静止慣性系である \(S\) 系では,光の4元波数ベクトルの成分は

$$k^{\mu} = (k^0, k^1, k^2, k^3) = (\omega, k_x, k_y, k_z)$$

\(A\) に対して速さ \(V\) で \(x\) 方向に運動する観測者 \(B\) の静止慣性系である \(S’\) 系では

$$k^{\mu’} = (k^{0′}, k^{1′}, k^{2′}, k^{3′}) = (\omega’, k’_x, k’_y, k’_z)$$

ローレンツ変換

\(S\) 系の座標 \(x^{\mu}\) と \(S’\) 系の座標 \(x^{\mu’}\) の間の座標変換は,以下のローレンツ変換で与えられる。

\begin{eqnarray}
t’ &=& \frac{t – V x}{\sqrt{1-V^2}} \\
x’ &=& \frac{x – V t}{\sqrt{1-V^2}} \\
y’ &=& y \\
z’ &=& z
\end{eqnarray}

この逆変換(\(S\) 系の座標 \(x^{\mu}\) を \(S’\) 系の座標 \(x^{\mu’}\) で表すこと)は

\begin{eqnarray}
t &=& \frac{t’ + V x’}{\sqrt{1-V^2}} \\
x &=& \frac{x’ + V t’}{\sqrt{1-V^2}}
\end{eqnarray}

光の位相は座標系によらない不変量である

\begin{eqnarray}
\omega t – \boldsymbol{k}\cdot\boldsymbol{r} &=& \omega t – k_x x – k_y y – k_z z \\
&=& \omega’ t’- k_x’ x’ – k_y’ y’ – k_z’ z’
\end{eqnarray}

ということから,4元波数ベクトルの成分も,ローレンツ変換で変換されることが導かれ,

\begin{eqnarray}
\omega’ &=& \frac{\omega – V k_x}{\sqrt{1-V^2}} \tag{1}\\
k_x’ &=& \frac{k_x – V \omega}{\sqrt{1-V^2}} \tag{2}\\
k_y’ &=& k_y \\
k_z’ &=& k_z
\end{eqnarray}

逆変換は

\begin{eqnarray}
\omega &=& \frac{\omega’ + V k_x’}{\sqrt{1-V^2}} \tag{3}\\
k_x &=& \frac{k_x’ + V \omega’}{\sqrt{1-V^2}} \tag{4}\\
\end{eqnarray}

光のヌル条件

簡単のために,光は \(xy\) 平面上を伝播すると仮定して,\(k_z = k_z’ = 0\) とする。

ヌル条件 \(\displaystyle \eta_{\mu\nu} k^{\mu} k^{\nu} = \eta_{\mu\nu} k^{\mu’} k^{\nu’} = 0\) より

\begin{eqnarray}
– \omega^2 + k_x^2 + k_y^2 &=& 0 \\
– \left(\omega’ \right)^2 + \left(k_x’ \right)^2 +\left(k_y’ \right)^2 &=&0
\end{eqnarray}

したがって,光の4元ベクトルの空間成分は以下のように書くことができる。

\begin{eqnarray}
k_x = \omega \cos\theta, &\quad& k_y = \omega \sin \theta\\
k_x’ = \omega’ \cos\theta’, &\quad& k_y’ = \omega’ \sin \theta’
\end{eqnarray}

ここで \(\theta\) は観測者 \(A\) が観測する光の進行方向と \(x\) 方向とのなす角,\(\theta’\) は観測者 \(B\) が観測する光の進行方向と \(x’\) 方向とのなす角である。

\(A\) とともに静止している光源からの光を運動する \(B\) が観測する場合

\((3)\) 式から

\begin{eqnarray}
\omega &=& \frac{\omega’ + V k_x’}{\sqrt{1-V^2}} \\
&=& \frac{\omega’ + V \omega’ \cos\theta’}{\sqrt{1-V^2}} \\
&=& \omega’ \frac{1 + V \cos \theta’}{\sqrt{1-V^2}} \\
\therefore\ \ \omega’ &=& \omega\frac{\sqrt{1-V^2}}{1 + V \cos \theta’}
\end{eqnarray}

光源静止系での振動数 \(\omega\) をあらためて \(\omega_0\) ,観測者 \(B\) の観測する振動数 \(\omega’\) をあらためて \(\omega_{\rm obs}\) とすると

$$\omega_{\rm obs}= \omega_0\frac{\sqrt{1-V^2}}{1 + V \cos \theta’} $$

特に,観測者が光源から遠ざかる場合は \(\theta’ = 0\) とすると

$$\omega_{\rm obs}= \omega_0\frac{\sqrt{1-V^2}}{1 + V} = \omega_0 \sqrt{\frac{1-V}{1+V} } < \omega_0$$

となり,振動数は小さく,したがって波長が伸びて観測される。

\(B\) とともに運動している光源からの光を静止している \(A\) が観測する場合

\((1)\) 式から

\begin{eqnarray}
\omega’ &=& \frac{\omega – V k_x}{\sqrt{1-V^2}} \\
&=& \frac{\omega – V \omega \cos\theta}{\sqrt{1-V^2}} \\
&=& \omega \frac{1 – V \cos \theta}{\sqrt{1-V^2}} \\
\therefore\ \ \omega &=& \omega’\frac{\sqrt{1-V^2}}{1 – V \cos \theta}
\end{eqnarray}

光源静止系での振動数 \(\omega’\) をあらためて \(\omega_0\) ,観測者 \(A\) の観測する振動数 \(\omega\) をあらためて \(\omega_{\rm obs}\) とすると

$$\omega_{\rm obs}= \omega_0\frac{\sqrt{1-V^2}}{1 – V \cos \theta} $$

特に,光源が観測者から遠ざかる場合は \(\theta = \pi\) であり,

$$\omega_{\rm obs}= \omega_0\frac{\sqrt{1-V^2}}{1 + V} = \omega_0 \sqrt{\frac{1-V}{1+V} } < \omega_0$$

となり,振動数は小さく,したがって波長が伸びて観測される。

以上のことから,光源が動くか観測者が動くかにかかわらず,互いの間の相対速度によって光のドップラー効果が起こることがわかる。