概要
Bordaの振り子を使って,測定地点の重力加速度を測定します.
装置と方法
この「Borda振り子」が何を指すのかは必ずしも一定していない印象を受けますが,ここでは「基本は単振り子なんだけど,その支点をナイフエッジを使って実装したもの」ぐらいに受け取ります.
最も簡単な理論では,以下の近似を適用します.
- 振り子の振幅は十分に小さい.
- おもりを質点とみなす.
この2つの近似を適用すると,振り子の周期 T と長さ l だけで重力加速度を決定できます(高校物理ではお馴染みでしょうか).しかしここでは後者(2番)の近似を適用せず,おもりの慣性モーメントを考慮します.つまり,(球形の)おもりの直径 2r も測定します.
周期の測定は,振り子がその振動中心を通る時刻を10周期ごとにストップウォッチで測定して行います.振動中心は望遠鏡で覗き込んで目視で確認します.
ここでは,島津理化製のボルダの振子BP-40を使用しています.振り子部分をナイフエッジにネジで固定する構造になっています.ナイフエッジ上部のネジでナイフエッジ部分の振動の周期を調整します(これを振り子の振動周期と一致させる必要がある).また,横方向の傾きを調整するネジもついています.
コメント
「重力加速度」は,大学の教養~専門基礎で行われる物理学実験においては非常にポピュラーなテーマです.ポピュラーなのはそれなりの理由があってのことで,個人的には次のような長所があると考えます.
- 測定対象が重力加速度という”身近な”物理量である.
- 重力加速度を直接(物体の落下運動を用いて)測定するのではなく振り子の運動を利用している(=間接測定を体験できる).
- 間違えずに行えば,誰でもある程度まともな(理想値の ±1 % 程度)測定値が得られる.
- 最も簡単な原理は高校生でも理解できるが,そこから踏み込んだ考察もしやすい(振幅などの条件の変化による測定値の違いなど).
- 特別に高額な装置を必要としない.
余談になりますが,「重力加速度」は実験テキストでは2人1組で行う題目として扱われています.これは,ストップウォッチがアナログ式だった頃の名残であると考えられます.ストップウォッチがデジタル式になり1人での測定も容易になったとはいえ,装置の数を急には増やせないのでしょう.(ちなみに,一部学科の実験テキストにおいて時刻の測定を 0.1 s の桁まで行うように記載されているのも,同じ理由であると考えられます.こちらはストップウォッチの更新に合わせて実験テキストの記述もアップデートされるべきであったと考えます.)