ここ最近取り組んでいる実験の紹介をします。

当研究室は、正木進三先生の系譜もありますので、休眠に関するテーマにも取り組んでいます。

バッタの休眠はホルモンも含めて分子的なメカニズムはあまりわかっていません。

私は分子的な実験手法は割と得意なのですが、初手として分子的観点からそのメカニズムに迫るのは得策でないと思っています。

まずは表現系として検出できる実験系を作って解明の糸口にしたいと思いました。

そこで、内因性の休眠卵を産むトノサマバッタと、高温下不休眠の卵を産むトノサマバッタの卵巣を入れ替えられないか?と思いました。

もしこのアッセイ系ができれば、バッタの休眠に関するいろんなことがわかるはずです。

大型昆虫の卵巣の取り替え自体は、カイコガの系統維持の技術として研究されたきた経緯があるので可能であると踏んで、学部生の和田くんにチャレンジしてもらいました。

結果は、なかなか良好に進んでいます。

 

それに味をしめて、翅芽も取り替えられないかと画策しています。

当研究室には、短翅の系統がいます。

これと長翅の系統の翅芽を取り替えることで、短翅が遺伝子型に依存するのか、レシピエントのホルモン環境に依存するのかわかるはずです。

白いバッタには短翅の遺伝子型、黒いバッタには長翅の遺伝子型をもたせています。

胸部の背側は、pronotum, mesonotum, metanotumの3節から成り、翅芽はmesoとmetaから生えます。

そこでちょっと乱暴ですが、pro, meso, metaの全てを交換してみました。

これはちょっとやりすぎでした。翌日には全て死亡しました。

そこで、mesoとmetaの右半分だけ交換しました。

これだと良い感じで、それなりの数がちゃんと生存して育ちました。

しかし、次の脱皮中にこんな感じで死にます。

 

脱皮する時は胸部から古いクチクラを脱ぐのですが、その時に強い内圧がかかります。

胸部の傷口から消化管が押し出されてしまうのかもしれません。

 

まあ、これも色々と工夫をすれば解決できる問題のような気がします。

 

色々と解決策を考えながら実験をするのは楽しいものです。

(通常は、アイディアを盗られると嫌なので、途中の実験結果をあまり公開しないのですが、これに関しては実験材料を準備できるグループはほぼないでしょうから大丈夫でしょう。。)