熱中症発生時の適切な判断と対応のために
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※本シートを一部改訂(または参考にして独自のシート作成)して使用する場合は、次のように出典を明記してください。
参考資料:「熱中症チェックシート」弘前大学教育学部附属学校園養護教諭部会
更新履歴
- 2020-11-01 弘大ホーム内にサイトを移行しました。
- 2014-07-01 初公開
概要
附属学校園における熱中症対策の取組の一環として、学校における熱中症に対する重症度の「迅速な判断」と「適切な対応」のため、2012年「熱中症チェックシート(試用版)」を考案しました[1][2]。さらに青森県内の養護教諭の協力を得て、チェックシートの試用と改訂を重ね、2014年7月、全教職員が学校において児童生徒の熱中症に対応できる「熱中症チェックシート」を開発しました[3]。開発当初より、弘前大学教育学部教育保健講座の諸先生方には各分野の専門的な見地からご指導とご助言をいただきました。
チェック項目
① 基本情報
-発生年月日、学年・組、名前、年齢、性別、記録者名-
- 全教職員が対応することを前提とし、対応した者を明確にするため、記録者名の欄を設けました。
② 重症度チェック
-重症度の分類、対応、熱中症の症状-
- 生命にかかわる緊急度の高い症状を見落とさないよう「Ⅲ度(重症)・Ⅱ度(中等症)・Ⅰ度(軽症)」の順に分類し、対応を赤字にしました。
- 熱中症の症状については、誰でもわかるよう「簡単な質問に答えられない」「足がもつれる」等、具体的な症状を記しました。
- 「倦怠感」「脱力感」「気分の不快」を「だるい」「力が入らない感じ」「不機嫌」等の子供の言葉や様子に置き換えました。
③ 応急処置
- 熱中症と判断した場合、すぐに対応できるよう処置内容を記しました。
- 処置状況は、学校から家庭・救急車・医療機関へのスムーズな引き継ぎのために必要な情報であると考えています。
④ バイタルチェック
-発汗、顔色、呼吸、体温、脈拍、血圧、その他の要因-
- 熱中症環境保健マニュアル記載の「医療機関に搬送する時医療機関が知りたいこと」を参考に作成しました。
- バイタルサインの他に発汗や顔色等も含めて「バイタルチェック」としました。
- 体温は腋下を冷やした時や発汗時など正確に測れないことがあるため、「体に触ると熱い」の選択肢を加えました。
- 血圧の記入欄の要望があり、追加しました。
⑤ その他の要因
- 熱中症は体の要因が影響して起こりやすいため、「寝不足」「疲労」「肥満傾向」「不規則な生活」「月経」等の選択肢を設けました。
⑥ 発生時の状況等
-発生場所、発生時の活動内容、天気・温度・湿度・WBGT(暑さ指数)-
- 重症度の判断や応急処置を優先させたあとに記録することが多いため、記入欄を下に配置しました。
開発上の留意点
① レイアウトの工夫
- 重症度の確認を最優先で行い、応急処置をしながら同時にバイタルチェックをするという流れに沿ったレイアウトにしました。
- 直感的に重症度が判断しやすいよう重症度の高い項目から並べ「Ⅲ度:赤、Ⅱ度:橙、Ⅰ度:黄」の3段階に色分けしました。
- バイタルチェックは目視で確認できる項目から順に並べました。
- 重症度チェック、応急処置、バイタルチェックは時間経過がわかるよう3回分記録できるようにしました。
② チェック項目の工夫
- 簡単に短時間で記入できるチェック形式にしました。
- チェック欄にはその他の症状や様子を余白にメモできるようにしました。
③ 養護教諭不在時の使用を考慮
- どの場面で熱中症が発生しても全教職員が対応できるよう、裏面に使い方を記載しました。
- 受診が必要な時にすぐ対応できるよう、校医等の連絡先を記載できるようにしました。
使い方
[A] 重症度チェック
- 状態をよく観察し、あてはまる症状に素早く☑
- Ⅰ~Ⅲ度のどのレベルか判断
- チェックした時刻を記入
※救急車要請の基準 ⇒◆Ⅲ度(重症)◆Ⅱ度(中等症)でも全身状態が悪い
[B] 応急処置
-[C] バイタルチェックと同時進行でおこなう-
- 協力者を見つけ、重症度チェック・バイタルチェックと同時進行で行う
- 処置内容に☑
- 処置した時刻を記入
※救急車要請か病院搬送の基準 ⇒◆水分が摂れない ◆応急処置で回復しない
[C] バイタルチェック
-[B] 応急処置と同時進行でおこなう-
- 発汗(汗の状態)・顔色・呼吸・体温など、見て・触れて記録できるものを優先
- 体温計は腋の下を冷やす前に汗をよく拭き取って使う
- チェックした時刻を記入
記入上の留意点
- 観察時刻 - チェックした時刻、応急処置した時刻を記入。症状に変化があれば、その時刻を記入。
- その他の要因 -聴き取れる範囲、わかる範囲で選択。
- 発生時の状況 -聴き取れる範囲、わかる範囲で、発生時刻、活動内容、場所の状況、温度や湿度等を記入。
- その他参考となる事項 -記録として残したいこと、その後の経過等を記入。
受診が必要なとき
- チェックシートは、医療機関に搬送する場合、情報として提供することができます。
使用上の注意
- 熱中症の症状や進み方は個々によって異なります。医師の診断とは異なる場合もありますので、あくまでも判断の助けとして使用してください。
活用例
- 附属学校園では、熱中症症状発生時の判断・対応の他、以下のように活用しています。
参考文献
*青森県および全国の養護教諭による活用評価は[2][4]をご参照ください。
[1]今井直子, 前田洋子, 森菜穂子, 淋代香織:重症度判断に役立つ「熱中症チェックシート」とどこでもチェックできる「モニタリングシステム」, 健, 第43巻, 第4号, 23-26, 2014年7月.
[2] 森菜穂子, 今井直子, 前田洋子, 淋代香織:学校における熱中症対策と熱中症チェックシートの有効性の検討, 弘前大学教育学部研究紀要クロスロード第18号, 53-62, 2014年3月.
[3]中田暁代, 森菜穂子, 今井直子, 丹代菜々, 小林央美: 熱中症チェックシートの開発と活用, 東北学校保健学会会誌第63号, 2015年9月.
[5] 環境省熱中症予防サイト,熱中症環境保健マニュアル, https://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_manual.php, 2020年11月30日現在
[6] 熱中症を予防しよう-知って防ごう熱中症-, 独立行政法人日本スポーツ振興センター, https://www.jpnsport.go.jp/anzen/Portals/0/anzen/kenko/jyouhou/pdf/nettyuusyo/nettyuusyo_all.pdf,2020年11月30日現在
[7] いざというときのための熱中症処置, クレーマージャパン, http://www.cramer.co.jp/care/hi_c1.html, 2020年11月30日現在
[8] 独立行政法人日本スポーツ振興センター, 「体育活動における熱中症予防」調査研究報告書, 8-24, 平成26年3月
[9]森菜穂子,大髙景子,丹代菜々,髙橋千晶:弘前大学教育学部附属学校園の暑熱環境と熱中症の発生に関する実態調査,弘前大学教育学部研究紀要クロスロード第24号, 67-77, 2020年3月.
研究開発・協力
- 弘前大学教育学部附属学校園養護部会
- 淋代香織,前田洋子,今井直子,森菜穂子,中田暁代, 丹代菜々
- 弘前大学教育学部教育保健講座
- 本研究は平成27年度弘前大学教育学部附属学校共同研究奨励費の助成を受けました。