付加価値を持った品種育成のため,粉質変異体,低アミロース変異体,モチ変異体を選抜しています.学生実験でも選抜を行いながら,メンデル分離比の検定を行います.
いま,そのスクリーニングにおいて着色変異体が得られました.3:1に分離する劣性変異体と思われるため,今年後代検定を行います.
胚周辺が赤黒く着色し,果皮も着色しています.
ただ,一般に果皮の着色は母親形質であるためM1個体の全てが着色し,かつ優性でないと出現してこないため,なぜ,1つの穂において劣性分離粒のように分離しているのでしょうか.変異原処理によるキメラ性でしょうか.キメラ性であれば,母親であるM1個体に生じた優性変異の組織周辺がすべて赤米になるように果皮色を制御している可能性があります.その場合は,着色粒のみ後代で着色することになるでしょう. もしくは,胚組織に着色する新奇変異でしょうか.それならば劣性ホモで固定したものが着色,もしくは,優性型のアレルをもった組織での後代M2での発現だと予想されます.その場合は果皮に浸透するような着色なのでしょう.今後の後代検定や交雑による遺伝現象の確認が待たれます.
正常粒と変異粒,いずれも1つの穂から分離
キメラ性について
完全に変異した遺伝子を持った細胞がすべての穂を形成しているならば次代の粒はすべて3:1での遺伝がみられます.しかし,後代を丁寧にみてみると下のようにキメラ性をみることができます.
ここでは1つの穂の2粒(矢印で示した個体)のみアルビノになっています.複数の穂を土にうえてみてみると・・・・
上記のように3:1になる場合もありますが,1つの穂のみ3:1,もしくは,1つの個体だけ劣性変異が見られるケースもあります.
複数の変異が集積している場合もありますが異なる細胞に変異があるせいか,独立だからかクロリナ(黄緑色)と矮性が別々の個体に出現しています.そのため,新たな変異はバルクとして選抜するか,すべての粒を調べるか選抜は悩ましいところです.